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「何で?何か事情があるのかい?」
…普通はそこで引くだろ。
宿泊先を探すのに必死なのか、ただ図々しいだけなのか、あるいはどっちもか。
総司は総司で引く気は更々無いらしい。
首を傾げ、年甲斐も無く、縋るような目で魅龍を見る。
これには魅龍もただ嘆息するしかない。
「はぁ…。
俺ん家、剣道場なんだよ。
その家柄っつか何つーか、親父が目茶苦茶厳しくてさ、勝手に人とか連れてくとキレるんだよね。
特に寝食沙汰になると」
鋭峻館師範、那由多 孝龍(こうりゅう)。
いつもは豪快で温厚な父だが、家計にも影響する寝食沙汰となると、途端に気難しい頑固親父へと変貌するのだ。
「へぇ。君ん家って道場なんだ…」
総司は感心するかの如く呟いた。が、次の瞬間、ニヤリと唇で弧を描く。
ゾクリ。
魅龍は背筋に嫌なものが走るのを感じた。
「こりゃあ尚更、君ん家に行かざるを得なくなったね。
君のお父さんに、是非お相手願いたいものだ」
…無理無理無理!!絶対無理!!!!
コイツ連れてくとか、俺が半殺しじゃ済まないから!!
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