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殺気に溢れた、常人ではない視線に彼女は屈する。
まともに合わすこともできないその瞳を少女は怯えながらも察した。
(そう……、この瞳が寂しそうなんだ……)
少年は動くこと無く少女を見つめ続け、やがて再び背を向ける。
そのとき。
少女は抜け目無く背の細く短い鉄製の杖を手に取り、目を静かに閉じて、少年にすら聞こえない声で何かを詠唱する。
「ゴメンね、…スリプクル!」
彼女の声が響いた、と少年に理解されたときは、もう遅かった。
少年の周りに幾つもの泡がふわりと出現し、弾ける。
スリプクル…。睡眠魔法。泡を弾けさせて対象一つを眠らせる下級魔法だ。
「うぐっ……、何をした…っ!」
彼の足がおぼつかなくなり、極度の眠気に襲われたのか、頭を押さえながら彼は倒れてしまった……………。
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