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とりあえず適当に頼んだ、甘めの果実酒に口をつけ、アンバーは隣に座った男性を見やる。
「兄ちゃん、1人かい?」
「いいや、連れがいる。今は……夢の中だろ」
「子連れかい」
「まさか。確かにまだガキだが、18歳だ。俺の子供なわけがない」
茶化した言い方に、アンバーは肩を竦め答える。
「随分若いのと一緒なんだなぁ。兄ちゃんも若いが、20未満は若すぎだろう」
「ちと訳ありでな」
適当にはぐらかしてみる。
実際アンバーはルチルの素性を知らない。
もちろんそれはルチルもアンバーに対して同じであった。
今無理に、それを知る意味はないように思う。
きっと、お互いに知るべきときが来る。
「兄ちゃんも、大変だねぇ。その子を守る為に、剣を?」
男性の茶褐色の瞳が、アンバーの腰にある大剣を見つめていた。
「……いや、こいつは昔からの相棒だよ」
「騎士かい? そうは見えないが」
訝しそうにそう聞かれ、アンバーは苦笑い。
鎧や甲冑もなく、ただボロボロのマントのみが騎士の名残のようなもの。
確かに、間違えても騎士には見えないだろう、と自嘲する。
「昔、ちょっとな。今は、ただの旅人だ」
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