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「こんな所に、何の用だ?」
そこは、廃墟だった。
視界をぐるりと隙間なく囲うは、建物であったらしい瓦礫の山。
本来は白などの色だったのかもしれないが、現在は埃と土に汚れ濃い灰色をしている。
その瓦礫に隠れるように、この廃墟を彩るは、骨。
それが何の骨なのか。
周囲に衣服らしい布がかろうじて残っている。
人間の、骨だった。
遡れば、賑わいのある国だったのかもしれない。
瓦礫の山は範囲がそこまで広くはなかったが、瓦礫になっていない後方は、まだ建物の形を残している。
残った建物は高さもあり、焼け焦げたりしていたが、そこが小さな街ではなく国なのだと、思うくらいには立派で広い範囲に広がっていた。
その、国らしき廃墟の中に1人。
佇むは、青年。
鮮やかなアメジストの髪は背中あたりまで伸び、無造作に、且つ一本にくくられ風に舞う。
ボロボロのマントを纏い、服も汚れ立派ではないのに、何故か彼は凜として映った。
その腰にぶら下がっている大剣は、しかし鞘でさえ色褪せ弱々しく見える。
青。
濃い、空よりも深い青の瞳。
その瞳が、大きい吊り目がちな目の中から睨むように、目の前に立つ――――1人の少女を、見据えていた。
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