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 泣き叫ぶ自分の声が聞こえる。  意識が浮遊し、今自身が夢の中にいるのだと、ルチルは認識した。  沈む人間、家、草木でさえ。  比喩でも何でもなく、それら全てが大地に飲み込まれていく。  それを、呆然と見つめる、自分。  この夢の中のルチルの髪は、まだ長い。  鮮やかな金がきらきら光り、揺れ。  ルビーの瞳が、怯えてる。  死にたくない。 『許されないから』 「ゆ、め……」  泣いていた。  月明かりすら届かない、今夜。  ルチルは闇の中、ベッドに横になり泣いていた。  一筋のみの、涙。  夢から覚醒したばかりの意識がゆらゆらしている。  もう一度眠りそうになって、ルチルは無理矢理体を起こす。  夢は、もう見たくない。  まだ蓋をしていたかった。  痛いから。
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