啄め 悪しき魂を

5/23
前へ
/91ページ
次へ
「あらあら風隠さん。強度が軟弱なのでは?」 と皮肉を言う冷名。 「ちょっと冷名!」 慌てて可那晦が止めるが時既に遅し。 風隠の露出した左腕から赤く歪に交錯した線が現れる。 「面白い。やはり貴様とは決着をつけねばな。どちらが可那晦に相応しいかどうか…」 双方、すさまじい殺気を解き放つ。二人の様子を見ていた可那晦は大きく息を吸って― 「やめなさい冷名!風隠!」 と叫んだ。 その瞬間、可那晦の首許が金色に光る。 光がやんだ後、冷名と風隠はその場で硬直している。 「おい可那晦!急に術かけるなって言ってんだろ!」 風隠が硬直しながらも必死に訴える。 「だって術使わないと喧嘩するじゃん」 その一言で風隠は黙る。図星なのである。 「てかさぁ、もうちょっと仲良くしてよ。まだ妖たちが動き出してないからいいものの、戦うとなったら本当に危ないよ」 その言葉に冷名は少しむっとなる。 「何で仲良くしなきゃいけないの?もし妖がやってきたなら、私一人で充分なのに」 「あぁ?そんなのこっちから願い下げだっつーの。本当に可那晦の親父も余計なもん与えやがって」 「口、閉ざしてもいいの?」 可那晦は笑顔だったが、その笑顔は妙に怖い。 なので冷名も風隠も首を横に振った。 「じゃあ解除するから、すぐに冷名は札に、風隠は短剣に戻ってね?」
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加