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可那晦はそう言って術を解く。
冷名と風隠はしぶしぶ言われた通りに本来の姿に戻るのであった。
「可那晦」
背後から声がする。
可那晦は振り向かずに返答する。
「何でしょうか」
「自主練も結構だが、本来の修行を疎かにすることは許さぬ。そんなことをしたら花隠を返してもらうからな」
可那晦の拳に力がこもる。
目の前にある木々を強く睨む。
「ご心配には及びません。これでも修行にはある限りの情熱を注いでおります」
背後の者はその言葉に黙る。
単なる皮肉を言ったのだろうが、まともに返されてしまっては言う言葉も見つからないだろう。
「それに」
可那晦はなおも続ける。
「あなたの言う通り、俺は100年に一度の鬼才なのでしょう?心配は無用ですよ父さん」
背後にいる者――すなわち可那晦の父親は鼻で笑いながら奥に歩いていく。
可那晦はだんだん遠くなっていく足音を確認し、舌打ちをして短剣を握り、ぶんっと素振りをした。
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