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「可那晦様」
その声に、可那晦は腕を止める。
この社の僧、隠憐〈カクレン〉である。
社は森の奥深くにあり、造りはまぁまぁ豪勢なのだが、見にくい位置にあるため人がなかなかやってこない。
だから僧など必要ないと思われがちだが、こういう人のいないところ程、妖が好むため僧の存在は結構重要なのだ。
「夕食の準備が整いました」
隠憐の言葉によって、ようやく陽が沈みかけていることに気がついた。
可那晦は短剣を腰に携えてあった鞘に入れ、隠憐と共に広間へ向かった。
広間には膳が四人分並べられている。
可那晦はそれを確認し、一枚の札と腰にある短剣を鞘から抜き、床に置く。
「冷名、風隠。夕食の時間だ」
可那晦がそう呟くと、札と短剣が人型になる。
そしてそれぞれの位置につく。
「では」
と隠憐が呟くと同時に、可那晦たちは手を合わせる。
「いただきます」
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