遺志

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     ◇  私は気づいたら、義兄の頬を平手打ちにしていた。  だって、ネネを、姉が、そう躾けたって。 「何、馬鹿なこと言ってるの。ネネは、お姉ちゃんの……」 「ミキの子供だ。紛れもなく、俺との間の」  その言葉に、ずきりと胸が痛む。  このごにも及んで、私はまだこの男が……。 「この子はミキが産んだ子。けれど、この子は……」 ――ミホの為に産んだ子だ。 「……は?」  頬を叩かれた勢いで、俯いたままの義兄。  私はその事の意味がすぐに理解できなかったけど、 「……まさか」  ひとつだけ思い当たるふしに、私は両手で口を押さえて俯いた。 「まさか……お姉ちゃん」 「……」 「義兄さんも……?」 「……」 「お姉ちゃんも、アンタも!!」
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