遺志

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 私は姉のものをいつも欲しがっていた。  着るものも、食べるものも、使うもの全てが、欲しくて堪らない。  同じものを与えられても、どうしても姉の持つものがいいように思えたから。  だから欲しくなると私は、いつも駄々をこねた。  両親はそんな私を必ず厳しくしかる。  けれど私は欲しがり続けた。  すると最後には、 『ミホが欲しいなら、これあげる』  姉は必ずそれを譲ってくれた。  一度だって、くれないことはなかった。  けれど、あの時だけは、 『お姉ちゃん!結婚なんてやめてよ!!』 『……』 『お姉ちゃん知ってたでしょ!私が、私がずっと!!』 『……ごめんね』 『!?』  あの時だけ、初めて、姉は私のワガママを聞き入れなかった。  だから私は、自棄を起こし、実家を出て行った――。
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