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「ミホちゃんの子になるっ」
「え……」
言われた意味がわからない。
実家を飛び出して以来、実家に電話すらしなかった私。
そんな自分が今日初めて、送られてきた出産報告の写真でしか見たことないこの子に、なぜそんなことを……。
自分で言うのもなんだが、姉とはあまり似てるほうじゃない。
「ネネちゃん。ミホお姉ちゃんはママになれないのよ?」
その場にしゃがみこんで、ネネの目線まで下がった母が、少しうろたえた様子で諭すように言い聞かせる。
けれどネネは、必死に首を横に振って聞こうとはしない。
私は疲れから冷静に物事を考えられなかった。
このままネネを引き剥いでさっさと出て行こうかとさえ思ったが、
「すみませんお義母さん。ネネを寝かしつけて来ます。ミホちゃん……」
「え?」
そう名を呼ばれてハッとした私を見上げた義兄は、私に有無を言わさないような鋭い眼光を放っていた。
それがなんとも言えない恐怖を感じ、私は慌ててネネに視線を戻した。
「ネネちゃん。私も一緒に行くから。ネンネしよっか」
「ミホちゃんも、ネンネ?」
「……うん。一緒にネンネ」
やっと顔を上げた愛らしいくも、不安げに見上げてくる大きな瞳にニッコリ微笑むと、
「ミホちゃんとネンネ!」
心底うれしそうに、屈託ない笑顔を見せてくれた。
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