【鬼】現る 喰らうは心

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 下駄箱にも、教室に向かう廊下でも彼は誰ともすれ違わなかったが、違った。彼は朝一番に教室に足を踏み入れた者ではなかった。教室の扉を開いた雄馬の目に、意外な光景が飛び込んできた。  静かな―雷鳴と雨音は別にして―教室には男子生徒が1人だけ自分の席に座り、机に突っ伏していたのだ。眠っているのか、微動だにしない。  その生徒とは彼の親友であり、昨日も部屋に見舞いに来てくれた真貴也だった。  ――ドクンッ……と雄馬の心臓が大きく脈打つ。今日の決意が真貴也に見透かされたようで、目眩さえしたらしい。真貴也の登校時間はけして早い方ではない、それが何故…?  
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