暗鬼～マガサスココロ～

【鬼】現る 喰らうは心

「雄馬、お前も何か話が有るんじゃなかったのか？」

「ん？　あ、いや、大した事じゃないんだ。忘れてくれ。さあッ、お喋りはここまでにして復習しなきゃな」　と言って雄馬は鞄から参考書を取り出し、視線を下げた。もう真貴也の顔を直視する気にはなれなかった。

　だから、雄馬には見えなかった。親友の歪んだ笑顔が。

　――教室にクラスメートの女子が入ってきた。いつも登校時間の早い生徒の一人だ。彼女は日頃から登校時間の遅い真貴也の姿が教室にある事に少し驚いた様子だったが、また気にも留めないような仕草で自分の席に着き、おもむろにノートを開いた。