153人が本棚に入れています
本棚に追加
――雄馬の目に涙が溜まる。彼は制服の袖でそれを拭った。その時、彼の肩をポンっと叩く手があった。
「雄馬、おはよう」
優子だ。彼女はいつものように(それでも何処かよそよそしく)笑顔で彼に挨拶をした。
「あ、ああ、おはよう。今日はいつもより遅いんじゃないか?」
違う、言いたい事はこんなことじゃない。
「う、ん。ちょっとね…ねえ、今日の放課後すこし時間ある? 話が有るんだけど…」 声のトーンを下げ、優子が言った。彼女の視線がちらと真貴也に向けられたのを雄馬は見逃さなかった。気付きたくないのに、目が付く。あるいはこういう状況こそ、人間のある種の集中力は高まるのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!