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突然の電話だった。
恋人にプロポーズするも、あえなく散ってしまった俺にとっては無神経なもの。
『話があるから、』
そう言って、場所はメールするからと間を置かずに告げると俺の都合も聞かず、一方的に通話を切った。
俺は、通話の途絶えた電子音を暫く呆けて聞いたままで。
携帯を握り締めて固まる姿を、秘書に見つけられるまで結構時間がたつぐらい。
それだけでも、俺にとってはショックが大きな出来事だったのかもしれない。
俺はとりあえず秘書に『急用が入った』と伝え、その後の予定を全てキャンセルさせると、すぐにメールで指定された場所へ車を向かわせた。
そして、今に至るのだが……、
「……」
「……コウヘイくん、」
私より先に居た彼、コウヘイくんは俺が向かいに腰掛けても、一向に口を開く様子はなく、ただ窓の外、大通りを見つめていた。
かれこれ十五分は経っている。
仕事をキャンセルしてまで来たのに、三十路間近のオジサンがからかわれたのだろうかと思い、
「無神経だな、君も」
「……」
思うより先に、言葉が出ていた。
「俺は、君の姉さんにフられた男だよ?」
「……」
「しかも一方的に呼び出すなり、話どころか黙ったままで」
いったい何考えているんだ。
と、心の中でぼやいて、冷めかけているコーヒーの入った真白いカップに手を伸ばした。
すると、
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