求愛リザベーション【元彼と弟】

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「俺が、全力でアンタをオとす」 「は?」  彼はすぐ振り返り、俺に向かって指差すとそう宣言した。  その表情は至極マジメで、彼的には落ち度のない言葉だと思っている様だが、 「あ、そう……俺を、潰すんじゃなく、」 「なっ!?」  俺はあまりの可笑しさに腹を抱えて笑ってしまった。 「な、何が可笑しっ、」 「いやいや、解った、楽しみにしているよ」 「んだよいったい!!」 「そうそう、伝票は置いていきなさい」 「断る。俺が呼びつけたんだから」  こんな時まで律儀なことを言う彼に、また笑いがこみ上げてくる。 「いい加減にしろっ!!」 「す、すまないっ、年をとると、どうも腹が緩みやすくて」 「馬鹿にしてるの」 「いや、可愛いなと」 「馬鹿にしてんじゃねぇか!!」  一向に笑いが治まらない俺に怒鳴る彼はウェイターに注意されて小さくなって必死に頭を下げた。  そんな姿すらも可笑しくて、どうもツボにハマってしまった。  俺はそんな事を考えながら、彼の姉に今度電話しようと思った。  彼女は何というだろう。  嫌がらせと勘違いされるかもしれない。  でも俺が本気だと気付いたら、きっと言い返せない。 「なにせ俺には、借りがあるからな」 「なに一人でぶつくさとっ」 「また怒鳴ると注意されるよ」 「誰のせいだよっ」  一先ず今日は彼を帰してあげよう。  けれど近いうちにまた、今度は俺が彼を呼びつけるだろう。  そして彼は律儀に、今日の借りを返すためにあらわれる。  そしたら、
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