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「それはまた……」
翌日の夕刻。
いつもの様に私を食事に誘った彼、シュンスケは目を見開いて、
「熱烈な、青年だね」
広い背を丸め、心底おかしそうに腹を抱えて笑った。
私は手にしていた塗り箸を折ってしまいたい衝動を抑えて、じっと彼をにらみつける。
その視線に気付いたのか、彼は顔を上げないまま掌を私に向けて「ゴメン、ゴメン」と、震える声で言った。
「全く冗談じゃないわ。言ってくるタイミングもタイミングよ!」
「俺が君にプロポーズした事を、弟のコウヘイくんに報告した直後だって?」
「コーちゃんの隣に居たのよ、アイツ」
私は忌々しそうに呟くと、
「まぁまぁ、男は一度や二度は年上に憧れるものだから」
「何言ってるのよ!アイツはコーちゃんの彼氏なのよ!あの時一番驚いてたのはっ」
「そうだね、そうだよね」
シュンスケは怒りのあまり立ち上がりそうな私を、向かいの席からなだめて落ち着くよう促した。
「コウヘイくんは君が大学を中退してから、手塩にかけて育てたんだもんな」
そうしみじみと語る彼の言葉に、思わず涙がこみ上げてくる。
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