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「自分のしたことぐらい。ちゃんと解ってます」
今にも泣き出しそうな瞳で、私の目を見つめる。
「俺、コウの事好きでした。たった二人の家族で、必死に生きてるアイツ、守ってやりたいと思った」
けど……、と呟いて、空いていた掌で、私の頬をそっと包み込む。
「それ以上に、守りたいって想う人……見つけたから」
初めて出逢ったあの時、あの瞬間。
『姉ちゃん。コイツカズト』
『はじめ、まして……』
緊張のせいか、体を強張らせながら折り目正しく頭を下げる彼を、可愛いと思ったのは真実。
そして、意識しだしたのは……、
「すぐなんて言いません。アナタの答えが出るまで待ちます。少しずつでいいから」
俺を、好きになってください――。
抱きしめられた腕は強く、広くて温かい。
頭の中で響く、
『君の本心を、聞かせて欲しい』
デザートが来る前に言われた、重苦しい言葉。
彼は、この事を予感していたのだろうか。
私がそんな事をグルグル考えていたら、
「全部、俺のせいにしてください」
「え……」
「コウの事も、シュンスケって人の事も、俺が上手くやりますから」
「なにっ、大学生の、バイトの……分際でっ」
嗚咽交じりの言葉で必死に言い返すと、耳元にクスリと笑う声が吐息と共に触れた。
「ひとつ、いいこと教えておきます」
「は?」
「この店ですね、」
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