夢と現の境にて

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街灯が光を灯しながらポツン、と立っている。 側には地味な木製のベンチ。 その他にはただ、闇だけ。 これは夢。 街灯の光は、ぼんやりと優しく身体を照らす。 ――その内に目が覚めるだろう。 そう思い、ベンチに腰掛けていた。 「……どうかしたのか?」 不意に後ろから声がかかる。 声からして、たぶん若い男だ。 黒いコートにフードを目深に被り、顔は見えない。 ここ夢の中ですよね?とは言えない…… 返答に困っていると、 「無理に言わなくても良い。オレも訳もなくここへは来るんだ」 男は一人で続ける。 何だかさっきより視界がはっきりしてきた。 ……気がする。 「ここはいい。心が落ち着く」 そう言うと隣に座った。 ……それだけ。 何か話すわけでもない。 周りがさっきより更に明るく開けていく。 どうやら街灯の光が徐々に大きくなっていたようだ。 まるで海底から海面へと上がるように。 眩しい…… もう起きる時間なのだろうか。 意識が現実へと戻る中、妙に彼が気になった。 ただ夢の中で会っただけ、初めて会ったはずなのに…… 何だか放っておけない気がして。 光が周りを塗りつぶすその瞬間、彼の顔が見えた気がした…… とても寂しそうな彼の顔が…………
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