-ある男-

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大岩の向こうで、水の音がする。 ひょい、と陰からのぞいて、凪は思わず息を呑んだ。 「キレイ!!」 急に途絶える木立ち 滑らかな岩壁 流れ落ちる水の柱 滝だ。 滝は、凪の足元と同じ高さから流れ、そこから二階分ほど下へ、落ちていた。 長年、水が地面を削り、滝となったのだ。 まるで大きな落とし穴のように、凪の目の前は小さな崖となり、滝は地面を突如として割っていた。 下をのぞけば、碧い水をたたえた滝壺がある。 透き通った水は、木に邪魔されることなく陽を浴び、それでも碧い。 川のようにながれ、凪のいる場所の下へと消えていく。
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