-ある男-

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凪は安堵して、手をついて男を覗きこんだ。 「目、覚めたみたいね。気分はど― ―ガバッ!! その瞬間、凪は男に組み敷かれた。 凪と男の位地が逆になる。 しかも、色気ただようシチュエーションではない。 そこには、確かにはっきり殺気がただよっていた。 「何を飲ませた」 くぐもった声。 どこから出したのか、凪の首もとには短剣が突き立てられていた。 「毒か、答えろ」 真っ白になった凪の思考が、だんだん色づき始める。 ―…助けたのに何この態度は ―しかも、毒、だと…? 「…聞き捨てならぁーんっ!!」 思わず口から出たのはルー爺に似た言葉だった。 しかし、凪の怒髪天を衝く勢いとセリフは妙にマッチして、十分に男を驚かせた。
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