江南雅和

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 大講義室の中は雑談する学生達の声で騒がしかった。既に席の八割は埋まっている。  雅和は目当ての女性が出席しているか、ざっと見回してみた。しかし、人数が多くてすぐには見つからなかった。  もしかしたら、出席していないのだろうか。  段ごとに席があるので、今度は一段ずつ降りながら、確認していく。 「雅和!」  不意に名前を呼ばれて、少し驚いたが、そんな素振りは見せないようにして、声のした方を見る。 「なんだ、明彦か」  今いる段の右手の席に同じ学科の学生である、竹田明彦がいた。 「なんだはないだろ。ここ空いてるから座れよ」
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