黒川絵亜莉

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 郵便配達員は、新築の二階建て一軒家の前でバイクを停めた。  髭の剃り残しが気になるのか、顎を何度も撫でながら、門に近づく。  そして、封筒に印刷された宛名をチラッと見た。  『黒川絵亜莉』  門に掛けられた郵便受けにも同じ名前がある。ここで間違いないようだ。  配達員はそこへ封筒を投入した。  それと同時に玄関から、ピンク色のパジャマを着た女性が出てきたのが見えた。  慌てていたのか、サンダルは片方しか履いていない。  髪には寝癖がついていて、所々飛び跳ねていたが、キレイな黒髪だった。  前髪が目に掛かっていてはっきりは見えないが、小顔のわりに目が大きく、猫を連想させる顔立ちだ。  美人というよりは、可愛いという表現が適しているだろう。  手渡しすれば良かったと、配達員は少し後悔しながら、バイクへ跨がって、次の配達先へ向かった。
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