聴こえないけど、流れてる音楽

黒川絵亜莉

　部屋に戻った絵亜莉は学習机の前に立った。

　この机は家を建て直した際に、母親からは処分するように云われていた。

　しかし、小学生の頃から使っていて愛着があったし、自分で施したキティちゃん仕様が気に入っていたため捨てなかった。

　右の一番上の引き出しを開き、ハサミを手に取る。このハサミにもキティちゃんの顔が付いている。

　封筒を丁寧にハサミで切って中身を取り出した。紙が数枚だけのようだ。

　中身の少なさに一瞬、不安がよぎった。もしかしたら、悪い知らせかもしれない。

　絵亜莉は、その場に座り、恐る恐る紙を開く。

　最初の一文のところで、目を見開いたまま、動きが止まった。