とある幻想の吸血姉妹

27/33
99人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
レミリアの勢いは強まるばかり。 「私たちが産まれて間もない頃、やってもいない冤罪で人間たちに殺されかけて! それからフランの精神はおかしくなってしまった! あんな強すぎる力を持ってしまったから! こうするしかなかったのよ!」 残酷な話だが、人間が吸血鬼を畏れ、恨むのは当然とも言える事。 彼女たちのような存在もいるが、ほとんどの吸血鬼は人間の血を吸い、殺す事に躊躇いがない。 ただそれだけで、レミリアの妹、フランは精神を病んでしまった。 行き過ぎた能力をその手に握ったまま。 その為にソレは殺戮兵器と化してしまい、結果、幽閉するしかなくってしまった。 結局、人間なのだ。 妖怪や妖怪や幽霊が恐れられているのも、人間の中で伝えられた物が肥大していったのがほとんど。 この吸血鬼姉妹も、つまるところ被害者だった。 だが。 だからこそ上条はその右手の握りを強くする。 「……馬鹿野郎」 「ーーあ?」 レミリアの襟を掴む右手の力を。 「馬鹿野郎って言ってんだよ! 何がこうするしかなかった、だ! 何一人で勝手に諦めてんだよ! まだテメェらの中じゃ何にも始まってねぇんだろ!? だったら始めろよ! 始める努力をしてみろよ! 姉なんだろ? 家族なんだろ? だったら助けてやれよ! 妹を救ってやれよ! 優しく、姉らしく! 声をかけてやれよ!」 「っーー! ふら、ん……私、は……」 上条が手を放すと、レミリアはカクン、と床に座り込む。 上条は部屋にいる全員を見回し、パチュリーに言う。 「確か図書館は地下……妹が閉じ込められてるのも地下だったよな」 「え、ええ。そうだけど……って、まさかあなた、」 「妹の所まで案内してくれ。俺も行く」 「そんな……いくらあなたが反則みたいな技を使っても無理よ! 暴走した妹様を止めるのは不可能に近いわ!」 「知らねえよ! できるかできないかじゃねえ。やんなきゃならねえんだろうが!」 上条の勢いに負けたパチュリーが溜め息をつく。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!