とある幻想の吸血姉妹

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今日の上条当麻は上機嫌だった。 朝はインデックスに噛み付かれず、登下校共にビリビリ中学生こと御坂美琴にも遭遇せず、学校でも担任の小萌先生に泣かれることなく、今の今まで普通に過ごしていた。 彼にとっての普通とは、幸せそのものと言っても過言ではない。 しかし忘れてはならない。 幸せな時ほど、不幸になった時のショックが大きいということを。 上条は自分の部屋の前まで来ていた。 彼としては扉を開けた瞬間に『とうまー、おなかへった!』とインデックスが強襲してこなければ幸せ度数MAXである。 (さあ、俺の幸運はどこまで続くのか……勝負っ!) 思い切り玄関の扉を開ける上条。 彼の目の前に、それはあった。 (ーーは!?) 扉の先に、暴飲暴食の限りを尽くしたインデックスがいたのではない。 三毛猫のスフィンクスが部屋を散らかしていた訳でもない。 まず、扉を開けた先に広がっていたのは、彼の部屋ではなかった。 それは、何も無い真っ暗な空間。 上も下も右も左も、奥行きさえも。そこには存在していなかったのだ。 視界に映るのは、こちらを見据えてぎょろぎょろとうごめく無数の“目”。 そこの中から手が伸び、驚く上条の腕を容赦なく掴む。 (なんだよこれ! マズイ、なんだか分からないが、これは非常にマズイ……!) 直感的にそう思った上条は直ぐさま抵抗する。 しかし現実はそう甘くない。 彼はそのまま謎の手によって暗闇の中へと引きずり込まれてしまった。 特売で買った卵のパックだけがそこに残る。 非常に残念な事だが、卵は全て割れてしまっていた。
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