とある幻想の吸血姉妹

4/33
前へ
/37ページ
次へ
そこで隣にいた女性が口を開く。 「驚く事はありませんよ。私だって似たような者ですから。あぁ、私は八雲藍(ヤクモ ラン)。紫さまの式神です」 そう言う藍の耳がぴょこんと揺れる。 紫は困惑する上条に、 「では……お話しますわ。今回、あなたを幻想郷に呼んだ理由を」 そう言った。やはり、どうにも胡散臭い微笑を身につけて。 幻想郷。 主に上条たちが暮らす日常の中で、人々に忘れ去られてしまったモノが流れてきているらしい。 人間もいるが、その数はごく小数。 ほとんどが妖怪、妖精、幽霊などの人外ばかりなのだと紫は言う。 そして、その中でも特に強い力を有するのが『吸血鬼』。 ツェペシュがどうだのと、インデックスが言ってた事もあったかも、と上条は適当に考える。 「ーー今回、その吸血鬼が幻想郷中に紅い霧を生み出したのよ」 「霧? またなんでそんな事を」 「吸血鬼っていうのは陽の光に極端に弱いの。死滅してしまう程ではないけれどね」 「なるほど、その吸血鬼が外を出歩く為に太陽を遮った、と」 えぇ、と紫は満足げに頷く。 理解が早くて助かる、といった所だろうか。 「それで、本来はこういう異変を解決する適任者がいるのよ」 それは、博麗霊夢(ハクレイ レイム)という神社の巫女だった。 彼女は異変が起こった際、本当ならば解決しに行く筈が謎の病気か何かで倒れてしまったと言うのだ。 「つまり……本来異変を解決する筈の巫女が熱でぶっ倒れちまったから、代わりに俺って訳か?」 その通り、と紫は頷く。 「そうは言っても、戦う事になる相手もまた幻想郷に暮らす者達なの」 「それは解ってるよ。だからこその制限なんだろ」 今、上条の右手は確かに異能の力を打ち消せる。 しかし、紫からの制限によって異能の"存在"は消せないのだ。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加