とある幻想の吸血姉妹

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「つーかさ、本来はその巫女が動く筈だったって……平行世界ってヤツなのか?」 普通ならば神社の巫女が異変解決に向かっていた筈なのに、その巫女がいない。 つまりはそういう事だ。 「だからこそのあなたよ。あ、ちなみに一つ言っておくけど」 「?」 上条は首を傾げる。 そんな彼に、紫は事もなげに話す。とても当たり前な事を軽く話すかのように。 「巫女がいなくなるとこの幻想郷はバランスを保てなくなる。だから妖怪達の間では彼女を殺さない事が暗黙の了解となっているわ」 その口は恐ろしくすらすらと動く。 言っている事は上条にとってとんでもない事実となって突き付けられているのだが。 「……ん?ちょっと待て、それって言うとつまり、」 「あなたはイレギュラー。……命の保障は、無いわね♪」 抗議しようと口を開きかけた時には、紫の作り出すスキマが上条を飲み込んでいた。 「……紫さま、彼は大丈夫でしょうか。見た所、普通の高校生に見えましたが」 藍は幻想殺しについては紫から聞かされている。 しかし、その上で彼は未だ普通の領域を出ていないのでは、と彼女は心配する。 しかし紫は、その懸念を振り払うように長く綺麗な金髪を手で払う。 「心配いらないわ。それに彼は普通なんかじゃない。近いうちに、顕界を救う……救世主になるでしょうね」 「……?」 藍は理解できなかったが、紫はただただ上条が消えた先を見て笑っていた。 「さあ、楽しませてちょうだいね。無能力者(レベル0)の幻想殺し(イマジンブレイカー)」
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