とある幻想の吸血姉妹

6/33
前へ
/37ページ
次へ
上条が飛ばされた先は、廃れた(ように見えるのは参拝客がいないからだ)神社だった。 (巫女さんってのは境内にいたりするんじゃないのか? ……って、ぶっ倒れてるんだったな) 上条は適当に考えながら足を動かす。 賽銭箱を見てポケットをがさごそと探り、財布を取り出す。 (せっかく神社に来たんだし賽銭ぐらいはなー) またまた適当に考えながら財布を覗き込む。一番小さな金額は百円玉。少し躊躇いもしたが、とりあえず硬貨を一つ、賽銭箱に滑り込ませる。 ちゃりーん、という音が静かな神社に響いた。 瞬間、 「い、今のはお金の音!?」 (っーー!?) 神社の中からそんな叫びが聞こえる。 更に、体を引きずるような音がして、それがこちらに近付いて来る。 思わず身構えた上条だったが、 「……あら、見ない顔ね。新参者?」 「あんたが……博麗霊夢か」 現れたのは一人の少女だった。寝巻きのままなのは寝込んでいたからである。 少女、博麗霊夢は首を捻って怪訝な顔をする。 「新参者なのに私を知ってるのね。人里の人間?」 「あー違う違う。顕界……だっけ? 俺が元から住んでいた場所からこっちに連れて来られたんだ」 「連れて……あぁ、そういう事ね。お気の毒に。私は今体調不良だから帰してあげられないわよ」 それも違うって、と片手をひらひらさせる上条に霊夢は更に眉を潜める。 「周りを見りゃ分かるけど……紅い霧が凄い事になってんだろ?」 「ああ、その事。本当なら私が解決しに行かないといけないんだけど、ご覧のザマなのよね。魔理沙に頼んで行ってもらったんだけど正直心配だわ」 知らない名前を聞いて、今度は上条が首を傾げる。 「魔理沙?」 「友達の魔法使いよ。あいつ一人に異変解決を頼んでんの」 「それ……大丈夫なのか? 相手は吸血鬼なんだぞ!」 「そうなの? 異変の犯人が何なのかなんて解らないわよ」 ここで『あれ?』と上条は違和感を感じる。 (もしかして、八雲紫はこの子に詳しい事情を教えていない?) ここが『霊夢が異変解決に赴かない』平行世界である事に関係があるのなら、これ以上余計な事を言わない方が良い、と彼は勝手に納得する。 「とにかく。俺もその異変解決を手伝うぞ」 当たり前のように言い放った上条に、霊夢は驚きを顔に出す。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加