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「何言ってんのよ。あんた普通の人間でしょ? そんな人を危険に晒す訳にはいかないわ」
本来その為に私がいるんだから、という霊夢だが、彼女の頬は赤く熱で時折体がふらふらしているのを見ると説得力は皆無だ。
「大丈夫、俺は少なくともそこら辺の人よりは喧嘩慣れしてるからさ」
「喧嘩って……だいたい弾幕ごっこって、知ってる?」
「なんだそりゃ?」
でしょうね、と霊夢は溜め息をつき説明を始めた。
弾幕ごっこ、スペルカードルール。
幻想郷内での揉め事や紛争を解決するための手段とされており、人間と妖怪が対等に戦う場合や、強い妖怪同士が戦う場合に、必要以上に力を出さないようにする為の決闘ルールである。
対決の際には自分の得意技を記した「スペルカード」と呼ばれる札を一定枚数所持しておき、全ての攻撃が相手に攻略されれば敗北となる。
また、カード使用する際には「カード宣言」が必要とされるため、不意打ちによる攻撃は出来ない。
基本的に非殺傷が暗黙の了解になっているが、例外もあるとの事。
「ここでは普通の『喧嘩』なんて無いのよ。スペルカードの無い一般人が妖怪相手に戦うなんて無謀過ぎる」
スペルカードと聞いて、上条は考える。
紫が言っていたのは、つまりこういう事だったのか、と。
幻想郷にいる妖怪や妖精たちの『存在そのもの』は打ち消せないが、それ以外の異能ならば打ち消せる。
「だったらなおさら。俺がやる」
「あんた……自分で何言ってるか、解ってる?」
「解ってるさ。じゃあ試しに……その弾幕とやらを出してみてくれよ」
そんな事を言う上条に、何も知らない霊夢は素直に驚く、というか呆れる。
一度溜め息をつき、
「怪我しても……知らないわよ!」
一枚の護符を放った。それは真っ直ぐと上条へ向かう。
(これが異能の力だってんなら……)
彼はただ右手を突き出すだけ。
(ーーこの右手が、こいつを打ち消す筈だ!)
バン! と音を立てて護符は消える。上条は傷一つ負っていなかった。
「嘘……一体、何が」
「幻想殺し(イマジンブレイカー)」
そう上条は言う。
「それが異能の力なら、例え神様の力だって打ち消せる」
例外はあるんだけどな、と付け足す彼は『神の力』を思い出しているのだろうか。
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