とある幻想の吸血姉妹

9/33
前へ
/37ページ
次へ
(あれぇ……) 少女は笑う。 おかしい、と上条は思う。もしかして自分はとんでもない勘違いをしてしまったのではないか。 少女が口を開く。 「あなたは食べてもいい人類?」 (っーー!?) 現状認識に約二秒。 その間に、少女、人喰い妖怪ルーミアは動き出した。 (ちくしょう、ちくしょう!) 繰り返すようだが上条の右手は弾幕なら消す事ができる。 つまり、存在自体は消せないのだ。 だから、 (なんで弾幕を撃たず、しかも喰う事に全力尽くしてんだよこいつら!) そもそも妖怪からすれば人間は対等に扱う相手ではなく、取って食べるだけの存在。 それ相手にわざわざ弾幕ごっこをけしかけてくれる訳がないのだ。 だから、だからこそ。 上条当麻は走って逃げるしかなかった。 後ろは振り返らず、前だけ見て。 だから。 後ろで起こった爆風が何なのか解らなかった。 「うおぉぉぉぉぉお!」 爆風に乗って飛び散る木の破片やめくれあがった地面の一部が上条を襲う。 真っ直ぐ走っていた方向に跳ぶ。 無傷でいられる方が奇跡な程、派手にごろごろと地面を転がった。 「いててて……な、何が……?」 倒れた体勢のまま振り返ると、丁度煙が晴れた所だった。 上条とルーミアたち妖怪との間に割って入るように何者かが立っている。 頭の帽子が印象的だった。全身ゴスロリチックな黒白の服も目立つ。 そして何より。 右手に持った箒こそ、彼女が魔法使いだと判断するのに最良の材料だった。 「おいおい、妖怪ども。寄ってたかって一般人を襲うとはいい度胸だなぁ!」 (さっきの俺とおんなじだ……) 堪らず苦笑いしてしまう上条だが、魔法使いの少女は更に言う。 「やるなら一対一でやれってんだ」 「違うだろ!」 思わず叫んでしまうが、後悔は無い。 実際、少女もその返答にウケたのか笑い声が聞こえる。 妖怪が後ずさった。 「もしこれ以上やるってんなら……お前ら、吹き飛ばすぜ?」 その一言を皮切りに妖怪たちが逃げていった。少女、ルーミアだけが逃げずに立っている。 「せっかく久しぶりに人間が来たって言うのに。食べたらダメなのかしら」
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加