軍鶏

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「失礼します…」  部屋の襖の向こう側から聞こえた。 「なんじゃあ、峰吉か!」  その声の主は、近くの書店「菊屋」の小僧峰吉だった。 「中岡様。薩摩屋からの伝言をお預かりしてきました」  峰吉は懐から手紙を取り出し、中岡へ手渡した。 「おぉ! ご苦労だったな!」  中岡は近江屋へ来る途中、菊屋へ立ち寄り、峰吉に薩摩藩御用達の店「薩摩屋」に手紙を届け、その返事を近江屋へ持ってくるようにと命じていたのだ。 「私は、中岡様と坂本様をお慕いしております。ご用があれば何なりとおっしゃって下さい」  峰吉は深々と頭を下げて、部屋をあとにした。
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