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その日は、珍しく風が強かった。
びゅーびゅーと吹くものだから、酒屋の窓もガタガタ揺れる。
慶応三年十一月十五日、時間は午後四時を回っている……。
「お~い! 福岡殿おられんかの―?」
竜馬は言った。
すると奥の暖簾の向こうから店主らしき男が現れた。
「これはこれは坂本竜馬様でごさいすね? 福岡孝弟様から話しは伺っております」
「それなら福岡殿に合わせてほしいけんど……」
竜馬は愛嬌よく手の平を目の前で合わせると、「頼む!」と言った。
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