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学校へしぶしぶ通った明希。
担任の品家とは、とても人使いが荒いことで有名だ。
今日の雑用では、プリントのコピー、品家の机の掃除、貼り出しなどなど。
いつしか時間は五時を過ぎていて、町がオレンジ色に染まりはじめた。
そろそろ、暑い夏が始まるのだ。
明希的には、冬よりも夏の方が楽なのだが、辛い季節には変わりない。
もうすでに夏服でもある。
疲労が身体の荷物となる中、明希は通学路をひたすら歩む。
その時だった。
信号のない狭い十字路を渡った時、目の前に一人のスーツの男がいた。
一瞬、昨日のスーツ達を思い出したが、どこか雰囲気が違う。
それを明希は無視してその場から去ろうとしたが、その男は話しかけてきた。
「……風裂明希くん、ですね……」
その声は、意外に美声だった。
「そ、そうっすが」
明希はピタリと足を止める。
男は明希の目を見て放さない。
「なんか、用っすか」
「そんな難しい顔をせずに安心してください。なぁに、ただの交換こですよ」
「こ、交換こだと?」
「はい、貴男の家にいる吸血鬼のことです」
「なんだとッ!」
コイツ、まさか……。
「もう貴男は聞いたかもしれませんが、私は騎士団の一人です」
「クッ!!」
「大丈夫です。私は争うために来たわけではありませんので」
「……交換、ってなんだよ」
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