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「理解が早くて助かります」
と、騎士の男は、どこからか、高級に見える大きなカバンを取り出した。
そして、一つのカバンを開ける。
その中に入っていたものは、札束だった。
「ここに三億用意してあります」
「三億だと……!?」
これって……。
「まさか、金と交換って訳か」
「これはただの飾りにすぎませんが、ご希望の額をどうぞ」
「……」
明希はしばし黙り込んだ。
「どうしました? 何も今決めろというわけではありませんが、我々は急いでいるんです。はやく吸血鬼の回収を……」
「……ふざけん、な……」
「……はい?」
「ふざけんなって言ってんだよ……!」
「まさか、一生遊んで暮らせるような金額を、拒否なされるのですか?」
「金なんているかよ……」
「貴男はどうやらあの吸血鬼を庇(かば)おうとしているようですが……。今日出会ったばかりの生き物に、そこまでする必要はないはずですが?」
確かに。
理由はどうであれ、段ボールで勝手に家に来たような生き物に、このように匿(かくま)う必要はないはずだ。
だがな、と明希は思う。
人間を金で取引し、その人の気持ちをミジンにも考えずに殺す。
それを、明希は許せなかったのだ。
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