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「……ふ、ふざけんなァァァァァァァァァアアアアアア!!」
夜の闇となる東京の裏通路に、その叫び声が響き渡った。
そこには高校の制服を着た一人の少年が全速力で路地を蛇のように駆け抜けている。
彼の後ろからは、いかにも怪しい黒いスーツを着た男達。
その手には小銃が……。
「くっそったれ!!」
その少年、風裂明希(かぜさき あき)の離れた場所からは銃声が容赦なく響き、後ろでは銃弾が弾く音が耳を叩く。
……この状況的に、彼は何か裏の人間かと思うかもしれないが、これはただの事故である。
それは十分前のこと。
夜のバイトが終わり、気を休めて帰っていた明希は、「ゲーセンでもいくっかなー」と、近道として裏道を通ろうとしたのである。
その時だ。
裏道を少し歩いていく先に、サングラスと紅蓮のようなスーツを着たデブと、サングラスをした痩せ細った男が、黒い高そうなカバンを渡し合っている場面を、偶然目撃したのである。
もちろん、その後といえば、お約束の「見られたからには生かしておけん」が炸裂し、銃で蜂の巣にされそうなのである。
それが、今に至るわけだ。
「クソッ! なんでこんなふざけた不幸を歩むんだよ俺はァ!!」
そう叫びながら、大通りに向かい走っている内に、あの黒い銃を持ったオッサン達は追ってきてはいなかった。
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