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とりあえず、車がさかんに通る東京の大通りまで来れたので大丈夫だろう。
歩行者が少ないのがなんだか怖いですね。
と、呑気になっていたが……。
大通りに来て安心するのは、どうやら早かったらしい。
その理由は、明白となる。
明希の目の前には小型ナイフを持ったフードをかぶった大男がこちらに向かって立っていた。
どうやら、スーツ達の仲間らしい。
「あ、あの……そろそろ止めにしません?」
その言葉はむなしく、大男は牛の如く勢いよく走ってくる。
そして、男が持つナイフが明希の身体を貫いた。
……いや、正確には身体を抜けたと言うのだろう。
胸に向けられたナイフは、明希の右の脇(わき)を抜けたのである。
「なッ!?」
男は思わず声を上げた。
これは体術の一つである。
だが、それは自らの意識で行った行為ではなかった。
明希は、そのままナイフを持つ手を脇に挟み、逆関節に逆らうように腕を地面に向けて下ろす。
すると、大男でもたまらず、腕よりも顔面からアスファルトに落下した。
「ぐはッ!!」
「すっ、スミマセンでしたッ!!」
そして大男はそのまま気絶した。
それを無視して明希は、そこからネズミのように逃げていくのであった。
これはまるで有効なる体術にも見えたが、単なる反射的行動にすぎなかった。
強ばって身体が倒れそうになり、そこに大男のナイフが吸い込まれるように通り抜けたのだ。
それに対して驚いた明希は、男とは違う方向に身体を逃がそうとした挙げ句、男の逆間接を無理やり曲げる体勢となり、まるでプロの体術モドキとなったのだ。
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