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幸か不幸かは別として、生きていることには変わりなかった。
またの不幸として、帰りは不良に絡まれないように注意して道を進む。
不幸とは、忘れた時にくるものであり、明希にとっては慣れたくもない慣れモノなのだ。
しつこく言うようだが、明希は不幸な人間の愚の骨頂大賞者だ。
そもそも、名前に問題がある。
男であるはずなのに、名がアキだ。
名だけで聞くと、ただの女の子ではないかと疑われる。
それはいいとして、とりあえず帰ることにした明希は、兄貴と二人暮らしの家へと帰った。
その家は、二人暮らしにしては異様に大きな家で、三階建てである。
それは親父がイギリス会社の社長であるからなのだが……。
今両親は、仕事の関係でイギリスにいるという、ふざけた両親である。
そして、明希の兄もふざけた人間だ。
「ただいまー」
「おっかえりー」
と、リビングからはソファーに寝転がった兄貴がいた。
「兄貴、メシは?」
「ああ、ラーメン作っておいて」
「……は?」
なぜだ、と明希は思う。
普段、帰ったら兄貴が手作りで晩ご飯を作っているのだが……。
「そうだ明希。明日俺はアフリカに行ってくるぜ」
「……はい?」
「アフリカだよ、あのアフリカ。やっと親父の許しが出たんだよねー」
と、そのまま兄貴は明希の肩を叩き、
「『また』、家は任せた」
そう、この兄貴は国外旅行が大好きな、ふざけた野郎である。
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