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――鮮血が、飛ぶ。
剣を一振りすれば床に赤の滴が不規則に並んで歪んだラインが生まれる。
赤き血飛沫は布がふんだんに使われた輝く白のドレスを、赤く汚した。
あぁ、なんて醜い色。
白で統一された宮殿に、赤という新たな醜い色が初めて加わった。
――いや、正確に云えば初めてではない、か。
何度やり直しても結末が変わることがない。こうして部下の命を切り捨てたのはこの時間軸では最初だが、正確には五回目だ。
そのことを、私は覚えてなどいないが。
死んだ白い部下の死骸に足をかける。屈み、肩から生えた翼をへし折ると、私は目をふと細めた。
なんと醜い生き物だろうか。
天使という生き物は神に仕える身で在りながら、美しいのはその背に背負う翼のみ。
欲と優越感に溺れたその姿は、彼らが蔑み続ける下界の人間共のそれと大差ない。
――私は彼らのことが大嫌いだった。
私に仕える身であるのにも関わらず、私を蔑んできたからだ。
そして今日再び訪れた『最悪』により今の私の機嫌はあり得ないほど良くない。
故に私は今、ご乱心中である。
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