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こればかりは仕方がない。彼はあの少年の死を笑ったのだから。
白い玉座の裏に前々から忍ばせておいたこの剣で、頭の固い天使を切り倒した瞬間……何とも云えない清々しさが身に染み込んだ。
日々の憂いが一気に拭われた気さえした。
しかしそれは単なる錯覚で、強烈な絶望感と脱力感に見舞われて剣を投げ捨て、私は玉座に腰を下ろす。
そして一息。
「彼が……また死んだ」
あの少年は、私の我が儘を叶える唯一の相手。唯一の道具。しかし彼は今日、実に五回目の死を迎えた。
五回ともとある少女の手によって。
過去四回の私もこうして頭を抱えたのだろう。そしてどうするべきか考えたのだろう。今の私のように。
そして辿り着いたのだろう。一つの過ちに。
『時の巻き戻し』は、神のみに与えられた絶対の力。
そして私はその力を施行することのできる唯一の存在。
かの少年が死んだ。私は死んでほしくなかった。
ならばそれを『なかったこと』にすればいい。
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