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仕方なく傍観を決め込む事にする。
アイツの人生なのだからあまりとやかく言っても仕方無い。
と、そんな矢先に悪い知らせが届く。
なんとアイツが死んだと言うのだ。
チャリを飛ばして現場を見に行く。
現場は三日前アイツと話した喫茶店のすぐ目の前だった。
死んだと言うけれども、所詮は他人事。
そんな実感も持てずに葬式に行く。
葬式に行って、手紙を読んで、初めてアイツが死んだのだと感覚が湧いてくる。
だがそれも涙を流す程ではない。
葬式も終わり、独りヤツが良く言っていたバイク屋に足を向ける。
もうとっくに営業時間は過ぎているだろうにそのバイク屋には光が灯っていた。
中に入ると覚えのある顔が三人いた。
一人は若い女。
死んだ友人の彼女だったヤツだ。
彼女は泣いていて目の前にあるものを睨んでいる。
あと二人は中年の女と男。
言うまでもなく友人の両親だ。
二人もただ涙を流し、目の前にあるものを睨んでいる。
目の前にあるのは友人のバイクだ。
漢のカワサキ…………ゼファー1100。
傷は殆どない。
まるでコイツを愛していたアイツがコイツの身代わりとなったかのように。
ふと、その瞬間眠っていた気持ちが首をもたげた。
その衝動的な"若さ"は俺を突き動かす。
――――数分後、友人の両親達の冷たい視線を尻目に俺はゼファーと共にその店を出た。
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