TWIST on the ACCELERATOR

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あれから正確には何年たったのか……。 まったく笑えねぇほど昔だが。 今はその笑えねぇ時代に逆行してやがる。 俺の心臓の真下にある4つの心臓――――ホンダドリームCB750フォア――――が良い子の声を鳴かせながら自分は北上する。 地図上では上に向かっているワケだがまるで自分の時代表を遡っているようで胸くそ悪い。 …………向かうは鈴鹿。 そう、誰もが憧れる日本の二大国際サーキットの一つ。 そして今日、栄光の八時間が始まる場所。 いやまぁ、もう始まってるかも知れねえが。 そんなこんなで鈴鹿に着く。 辺りはうっすらと暗くなりはじめて、鈴鹿を駆け巡る希望のエンジン音は聞こえない。 まったく無駄足か、と思いながらも来たことは一応示さねば……とモニターを覗き込むとちょうど優勝したライダーがインタビューを受けていた。 どうやらスタート時の致命的なトラブルからのドラマティックな優勝だったらしい。 『――――ええ、その時にはもうピットのみんな沈んじゃって……。 まあ自分もその一人なんですけど』 爽やかな笑顔が似合うその青年はそこで思い出すように話を続けた。 『でもその時、初めてバイクの乗り方を教わった人から言われた言葉を思い出して……。 "走り出してもいないのにビビってんじゃねーぞ" ってね』 …………は。 まったく、笑えねぇ話だナ。 …………何を隠そう。 そのインタビューを受けている青年こそ、昔このCBで半回転したあのクソガキだったのだ。 ったく。 ホントにこれしか出てこねぇ。 だが、小僧。 ――――覚えておくといい。 お前がこのCBで走り出した時と、この八耐で走り出した時は同格なのだと。 ――――覚えていてほしい。 お前が感じたそのゴールの瞬間こそ永遠に被ることのない別格なのだ………と。
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