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昨日の夜を思い出す。
『告白されるの初めてだったし……。引き受けたほうがよかったのかな~?』
こんなことを言っていたわけだが、メールで返ってきたのは……
『このわたしがアンタなんかと付き合うわけがないでしょ⁉』
隣の部屋で発狂しているのと、メールで送られてきたのでは、内容がまるで逆だ。本当の愛川さんの気持ちはたぶん前者だろうし、僕はそうであることを願っている。
今は、1時間目の化学の授業だ。どうやら愛川さんは教科書を忘れてしまったようだ。
「先生、私化学の教科書忘れちゃいましたー」
「そう。それじゃあ……高原くんに見せてもらいなさい」
「はーい」
愛川さんは机をくっ付ける。一昨日とは違い、楽しそうに笑っている。
「なんでそんなに楽しそうなんすか?」
「わ、わざと教科書を忘れてアンタに机をくっ付けて授業を受けたいだなんてこれっぽっちも考えてないんだからねっ!? 偶然忘れたのよ、偶然!」
愛川さんの顔がどんどん赤くなっていき、うつ向いてしまい顔が見えなくなった。可愛いなぁ~。
まさか彼女がそういうふうに思ってくれているとは……。嬉しい限りだ。
「の、ノートはあるから見せてもらわなくても結構だからね」
化学の教科書を忘れたのにノートは持ってきているのは、おかしくないか?
「色々とツッコみたいとこあるんだけどさ、他の教科書は……?」
「家庭の教科書はある」
家庭って今日はなかったような……。もしかして毎時間机くっ付けてくれるのか!?
「今日は家庭ないぞ」
「じ、時間がなかったから近くにあった家庭の教科書をカバンに詰めてきただけなんだから!」
今日はないのに意味ないだろ。
「はーい、高原くん、この式解いてモルを計算してください」
「……えっと――」
イチャイチャし過ぎたらしい。いきなり先生に指名されクラスメイト達は大爆笑。愛川さんもクスクス笑っている。
頭を掻きながら軽く頭を下げる。
「高原くん、この問題できますか?」
「で、できません……」
「では愛川さん。前に書きにきてください」
「はーい」
えっ、解るの?僕とずっと喋ってたのに……!
愛川さんはスラスラと黒板に式を書いていく。いきなり当てられてサッパリだったが、よく見れば基礎問題だ。あれくらいならできて当然だな。
キーンコーンカーンコーン
1時間目終了。チャイムが鳴るのと同時に愛川さんは席を元の位置に戻した。
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