Ep.02 愛の突撃大作戦!

4/10
前へ
/252ページ
次へ
急に携帯を持っている右手が震えだした。落とさないよう左手で右手首を固定する。 手の震えがおさまり、通話ボタンを押した。 「はい、もしも――」 『アンタはわたしのことが好きなのよね!?』 「あぁ!」 『だ、だったら、わたしがアンタを好きになれるように努力しなさい! もしそれができたら付き合ってやっても構わないわ。ありがたく思いなさいよ!』 「今の言葉、忘れるんじゃねぇぞ」 『ち、ちょい訂せ――』 都合の悪い条件を言いかねないので、言われる前に電話を切ってやった。 よし、絶対に好きになってもらおう。 帰り道、僕は曲を聞かずどうしたら好きになってもらえるか考えていた。 一番手っ取り早いのが、僕が愛川さんの家に行くことだ。僕の部屋と彼女の部屋は目と鼻の先にあり、簡単に侵入することができる。これでいつでも愛川さんに……! 「それじゃあ、早速お邪魔しようか」 自分の部屋に上がり、窓を開け、窓枠に足をかける。愛川さんの部屋は今日もカーテンで中の様子は見えなかった。 いや待てよ。そもそもまだ帰ってきていない可能性だってある。部活に入っていたり……。 突撃大作戦は9時に決行しよう。 どうも気持ちが落ち着かない。9時まで待ちきれない。今、愛川さんはなにをしているのだろう。部活に励んでいるかもしれないし、もしかしたら家にいてなにかしらしているかもしれない。 そういえば明後日は1学期の中間テストの試験発表だったか。……とりあえずテスト範囲っぽいところを勉強しよう。 iPodをスピーカーに差し、曲をかけながら勉強する。こうしたほうが集中できるのだ。 「おっ、結構頑張ったかも」 ふと机の上に置いてある時計を見ると、6時を過ぎていた。 「よし、本日はこれにて終了。さぁ、飯だ飯だ」 まだ制服であるということに気付いた。 「う~ん、今日はなににしようかな~、っと。……肉じゃがでいっか」 台所に立ち、今日の夕飯の準備を始めていると、 ピンポーン と、インターホンが鳴った。 そーっと覗き窓から外の様子を伺うと、愛川さんがボーッと立っていた。 いきなりのことすぎて、僕は玄関の扉に頭を思いっきりぶつけた。 「いてっ!」 これってデジャブか? とりあえず玄関のドアを開ける。
/252ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1099人が本棚に入れています
本棚に追加