1099人が本棚に入れています
本棚に追加
「用なんてないけど、暇だったから仕方なく来てやったわ!」
「ありがとな」
「べ、別に礼なんていらないんだからねっ!」
それは口癖か!?
それとあなたなんで怒ってんの!?
それとあなたなんでそんなに顔が赤いの!?
それとあなたなんでそんなに可愛いの!?
「アンタ1人?」
「そうだけど……」
「いい匂いするけど、料理かなにか作れるの?」
「うん」
「ふ~ん」
その後、愛川さんは何も言わず帰った。さっきの質問の真意を聞きたい。
「さて、飯でも作るか」
今日は肉じゃがにでも挑戦してみよう。
約2時間後、肉じゃが完成。もう一品作りたいが、僕の料理スキルではまだそんな余裕はない。
「いただきます。……う~ん……」
見た目は普通に美味しそうだが、味は微妙。ちと難易度が高すぎたかな。
「もういらねぇな」
残った肉じゃがをタッパーに詰め、冷蔵庫に。
ここで1つ名案が思い付いた。
「愛川さんにあげたら喜んでもらえるのかな~?」
不味くはないが美味しくもない……。きっと『誰がアンタの手料理を食べたいのよ、バカ!』とか言われるのがオチだ。
風呂にも入りジャージ姿の僕は、タッパー片手に自分の部屋に上がる。愛川さんの部屋はカーテンで中の様子は見えなかったが、明かりがついているようで少し明るかった。
「さて、それでは突撃大作戦でも始めましょう!」
窓枠に手と足をかけ、愛川さんの部屋の窓に手をかける。
「やっぱ閉まってる」
「ん?」
ヤバいヤバい!気付かれたのか!?
カーテンの向こうに見える愛川さんのシルエットがこっちに向かっている。
これはまずい。
今僕の右手にはタッパー、左手は窓枠。愛川さんが窓を開けてしまうと、窓枠から手が離れてしまい、地面に落下。まぁ、とにかく大変なことになる。
「誰かいるのー?」
こういうときの対処法は1つ!
「ニ、ニャー」
「なーんだ猫か――」
助かった~。
「とか思うわけないでしょうがこの変態!」
なにっ!?
バンッとカーテンを開け、その勢いのまま窓もフルオープンする。
窓が開く瞬間、僕は窓を押し離し難を逃れる。
「なーにやってるのかなー!?」
「肉じゃが作りすぎちゃったからあげようと思ったんだけど……」
「へ、へー。それで、どうするつもり?」
分かってるくせに!
「食わないか?」
「べ、別にいいわよ。ちょっとお腹空いてたし」
最初のコメントを投稿しよう!