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それでは突撃開始。
「おっじゃましまーす」
足を伸ばせば愛川さんの部屋に届くほどの距離。
「ちょっ、アンタなにしてんのよ!?」
「まぁそんなこと言わずに~」
勝手に人の家に上がり込んでいるただの変態、と言われても仕方がない。僕は女の子が好き、いや、大好きだ。
「アンタ、これ不法侵入なんだからね!?」
「そっか……。じゃあ、帰ろっかな~?」
「それはダメ!」
帰ろうとする(帰るつもりは全くない)僕は、愛川さんに手を掴まれた。……それも両手で。
「帰っちゃうの……?」
「じ、冗談に決まってるじゃんか~。ハッハッハ」
そりゃあ~、こんなに可愛い子が上目遣いでそんなこと言われたらもう……。
「ほい、肉じゃが。ちょっと味薄いかもだから」
「ありがと。冷蔵庫に入れてくるからゆっくりしといてね」
愛川さんはトコトコと下りていった。
「ピンクの水玉……」
ピンクの水玉パジャマってすっげー可愛い!
「女の子の部屋ってこんな感じなんだ~」
薄いピンクの壁紙に、たぶん愛川さんが好きなアーティストのポスターを4枚貼っている。
「お待たせ。なにも触ってないわよね!? 触ってたら百万回コロス……」
「触ってないよ~」
ベッドとか布団とか触りたくて仕方ないけどな。あぁ~、自分で自分を抑えられねぇ!
「下に親とかいるの?」
「いるよ。まさか、挨拶に……!?」
「違うわ! ……いいの?」
「ダメに決まってるでしょ、アホ!」
「まぁその内させてもらう予定なんだけどさ~、愛川さんって僕のこと好きだったりするの?」
愛川さんは急に僕に背を向けた。
「嫌い、じゃないよ」
「じゃあ好き?」
「好き、でもないよ」
「じゃあ、僕とゴキブリだったらどっちが好き?」
「アンタに決まってるでしょ!?」
「ヨッシャー!」
ゴキブリより僕のほうが好きなんだ。よかった。ゴキブリのほうが好きだったら、僕は窓から飛び下りていたかもしれない。
「なんで後ろ向いてんの~?」
「特に意味はないわ!」
「あぁ、そう」
愛川さんの耳が赤いのが丸分かりだ。僕に襲われるのにビビってしまったか、僕に会えてドキドキしてしまったか。
「愛川さんもう寝ちゃうでしょ? だったらもう帰るね」
窓枠に手をかけた時に、
「待って!」
と一言。『もうちょっとここにいてくれないと寂しいから、ずっとわたしと一緒にいなさい!』とか言い出すのか?
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