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なんと玄関に、傘を杖代わりにして仁王立ちしている愛川さんがそこにいた。
「それはこっちのセリフなんだけど……?」
「ピンポン押しても反応ないから入ってきてやったのよ」
「はぁ……」
「さぁ、行くわよ!」
色々とツッコみたいのだが、制服の袖を引っ張られている僕はそれどころではなかった。
「雨降ってる」
「傘差せば?」
「…………」
分かってるさ。彼女は相合い傘をしたがっているということを。その証拠に、愛川さんが傘の脚を親指と人差し指でへし折った。
「差さないの?」
「壊れた……」
壊したの間違いだけど。
「相合い傘がしたいのですか?」
「バッ、バカ! 誰もそんなこと言ってないでしょ!?」
顔を真っ赤にして言われると説得力が全くない。
「風邪引いたりしたら大変だから入んな」
実は家にもう1本傘があるのは内緒だ。
「だ、誰かに見られたらどう責任取ってくれるつもりなのよ!?」
「だったらこれ使え!」
僕は傘を差し、愛川さんに差し出す。
「だったらアンタが濡れちゃうじゃない!?」
「こんなに可愛い女の子を濡らすわけにはいかないだろ?」
愛川さんの顔が真っ赤になる。
「それじゃあわたしが悪いじゃない!」
「だったら一緒に入るか?」
「アンタがそうしたいんだったら……」
カギを閉め、学校に向かって歩く。後ろからカバンを頭に押さえて愛川さんが駆けてくる。
「イジワル~」
「そんなつもりはないんだけどな~――ってちょっと!」
結局相合い傘ですか。
まぁ、腕に抱きつかれてるからいっか。
「まだ『友達』のままなの?」
「そうよ!」
「腕に抱きついてるのにか?」
「そ、そうよ、友達! それにこうしとかないとわたしが濡れちゃうし」
僕の右肩が濡れているのだが……。まぁ、好きな子のためならこれくらい苦にはならないな。
学校に着くや否や、愛川さんは傘から飛び出した。見られるのが嫌らしい。女の子の気持ちはよく分からない。男はもっとこのままでいたいと思うのだろうが……。
ドタドタと後ろから誰かが走ってきた。多分アイツだ。アイツしかいない!僕はソイツを無視して教室に向かい歩いていると、ソイツが僕の前に立ちふさがった。
「北斗百烈拳!」
「はいはい……あべしあべし」
「つれねぇなぁ……」
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