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ソイツこと藤堂清孝(とうどうきよたか)は、『北斗の拳』のマンガを全巻揃えていて、体格がケンシロウみたいなヤツだ。
コイツとは家が近所で昔から仲がいい。見た目はあれだが、中学の時は学年でトップクラスの学力を誇っていた。
僕にはなにかと『北斗百烈拳』とか『残悔積歩拳』とかやってくるが、死んだことは一度もない。
とりあえず、『北斗の拳』が大好きで隣のクラスで一番喧嘩が強くてかしこい不思議なヤツ。
「かしこいのに、なんでお前はそんなにバカなんだ?」
「妹に勧められてからハマっちゃってさ~」
妹も『北斗の拳』に興味があるのはビックリだ。それを勧める妹も……。
「今日日直だから先に行くな~!」
傘も差さずに元気なものだと思う。
愛川さんを追うように、早足で教室に向かうと、ちょうど彼女がドアにカギを通していた。
「おはよ、愛川さん」
「おはよう……」
話しかける度に赤くなる愛川さんが凄く可愛い。
「聞いてほしい話があるんだけど……」
「ど、どうせ『好きだ』とか言うんでしょ!?」
「そんなんじゃないな」
「だったらなによ!?」
「付き合ってくれ!」
愛川さんは目が回ったかのように、フラフラとバランスを失った。
「いきなりなんてこと言ってんのよ、このバカ!」
「無理なのか……?」
「最近不景気なのよ!」
関係ないと思う……。
「とりあえず無理なんだな?」
「まだ……アンタのこと好きじゃない……けど、嫌いじゃない」
「なるほどね。この間も言ったけどさ、僕を好きになってもらえるように頑張るからさ、愛川さんも……あの……なんというか、その……」
「分かったわよ! わたしもアンタのことがす、すすす好きになれるように努力してやってもいいわ!」
あの夜にあんなことを言っていた愛川さんと付き合うのは、なかなか難しいと思う。理由はないが、なんとなく僕の勘がそう告げている。
「なぁ、明日テスト発表じゃん? だから勉強見てくれねぇか?」
「いいわよ。べ、別にテストのこと以外に教えてほ――あーもー!」
「オッケーなんだな?」
「そ、そうね!」
無言でガッツポーズ。
「それじゃあ、色んなことでも教えてもらおっかな~」
「い、色んなこと!?」
「色んな教科って意味だったんだけど……」
「それくらい分かってるわよ!」
分かってなさそうだったのだが……。
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