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高校に入学し、新たな友達や先生、部活にも慣れ始めた5月。まぁ、僕は部活に入っていないが。
軽く自己紹介をしよう。僕の名前は高原崇志(たかはらたかし)だ。好きなものは女の子や甘いお菓子やケーキ。嫌いなものは……特にない。
今日はゴールデン・ウィークが明け、最初の授業の日だ。雲1つない快晴。田んぼのあぜみちで1つ伸びをする。自然と大きなあくびが出る。
1人で登校するのにはもう慣れた。僕んちの近くに誰も友達が住んでいない。だから、朝のお供はiPodになる。
「はぁ~、今日もか」
教室はまだ閉まっていた。つまり、僕が一番初めにやって来たわけだ。
「めんどくせ」
職員室に向かい歩く。
「失礼しま~す」
教室のカギが掛けられている場所まで最短距離で歩き、さっさと職員室を後にする。
「失礼しました~」
教室にカギを通し、教卓の上に置いておく。
自分の席(窓側2列目)まで歩き、カバンを枕にして寝る。これが僕の朝休憩の過ごし方。
キーンコーンカーンコーン
そしてホームルーム開始のチャイムで目を覚ます。
大半の生徒達は自分の席に座り、周りの友達と会話をして先生が来るのを待っている。……僕も誰かと話がしたい。
友達がいないわけではない。周りに男がいないだけなのだ。最初の席替えでこれはないでしょ~!
けど、この場所でよかったと思う。
隣の席の女の子がとびきり可愛いのだ。
165cmくらいある身長にキレイな茶髪でポニーテール。パッチリとした大きな目に柔らかそうな唇。とにかく可愛いのだ。
彼女の名前は愛川鈴音(あいかわすずね)。噂によれば彼氏はいないらしい。この席になった時から僕は愛川さんに告白しようと決めた。
決めたはいいものの、きっかけがない。
例えば食パンをくわえていると、電柱のある曲がり角でごっつんこ。ぶつかった子が実は転校生、なんてことはない。
例えば暗い路地裏で不良に絡まれていて、颯爽と不良を蹴散らした、なんてこともない。
このままだと何もできないのではないか、と思うようになった。
女の子と会話したことがない僕にとって、愛川さんと話をするのは高すぎる壁だ。
しかし、なななんと、今日は小さなきっかけが訪れたのだ。
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