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「ねぇ」
「なに?」
「僕のどこが無理?」
「顔つき」
「えー!?」
「高原くん、なにかおかしいですか?」
先生はチョークを持ったまま振り向き注意する。
「いえ……」
1時間目、英語。僕は知らず知らずの内に愛川さんに話しかけていた。顔つきがアウトだったらどうしようもないが、僕の顔はそんなに酷いの?
休憩時間、愛川さんは友達の席へと移動すると感じた僕は彼女を呼び止めた。
「なに?」
「昨日、回覧板持って僕んち来た?」
「…………アンタの家だったの……?」
「そうだけど……」
愛川さんは何も返さず友達の席に行ってしまった。
「今日の崇志くんは積極的だな~」
今の会話を見ていたのか、池っちがニヤニヤしながら僕の席に来る。
「池っち、僕頑張るよ」
「お、おぅ……」
『なにを?』と、ツッコミたそうな顔をする。
学校での愛川さんとの会話は1時間目のアレだけとなった。
放課後になり、池っちと共にトイレ掃除に行き、愛川さんに話しかける勇気を持てず、1人曲を聞きながらあぜみちを歩く。
「……なんで……?」
家の前に愛川さんが制服を着たまま立っていた。今度は待ち伏せか!?
「なにをしていらっしゃるのですか?」
「はい、回覧板」
「どうも」
愛川さんは僕の胸に回覧板を押し当て、彼女は隣の家へ駆け込んだ。えっ、なんで隣!?
隣の家の表札を見ると『愛川』とあった。えっと……お隣さん?
「なんで今まで気付かなかったんだー!?」
いつでも適当に用事を作って会いに行けるじゃないか!15年とちょっと生きてきたが、これほど驚いたことはないと思う。
ピンポーン
僕はお隣さんのインターホンを押す。
「はーい」
制服のまま玄関からヒョコッと愛川さんが出てきた。僕の顔を見るなり嫌そうな表情をしないでください。凄く傷つきます。
「家が隣だなんてすっごい偶然だね!? どうして今まで気付かなかったのかなー!?」
「知るか!」
バタンと勢いよく玄関の扉を閉められた。
携帯をいじりながら家に帰る。家の中は少しヒンヤリする。
「まさか愛川さんの家が隣だったとはな……」
愛川さん家の方向へ出かける用事もないし、この家に住み始めたのは高校に入学する2日前だったし、仕方ないっちゃあ仕方ない。
電話帳のカーソルを愛川さんにしてしばらくジッと見つめる。
「あんなこと言ってたけど、メアドはもらっちゃったんだよな~」
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